
はじめに
臨床検査技師を育てる養成校の教員は、どのような仕事をしているのでしょうか。教壇に立って講義をする姿を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実際には学内実習、卒業研究、臨地実習、国家試験対策、学生相談、入試、広報、研究、学校運営など、幅広い役割を担っています。
少子化による学生数の減少、学生の価値観の変化、医療DXやAIの進展、地域医療を取り巻く環境変化などを受け、臨床検査技師の養成教育も転換期を迎えています。今回は、養成校の教員として働く臨床検査技師とのパネルディスカッションから、教員の仕事とキャリア、教育の魅力、臨地実習の課題、そして養成校の未来を整理します。
本連載は、連盟青年部「臨床検査技師という生き方と未来」での意見交換を参考にしています。
※画像はAIによる生成のため誤字があることご了承ください。
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教員としての1年間の活動内容
教員の1年間は、4月の新入生オリエンテーションから始まります。学校によっては、数学や理科など、高校までの学習内容を補うリメディアル教育も行われます。担任を受け持つ教員は、学生生活や学習面の相談に乗り、新しい環境へ適応できるよう支援します。
講義が始まると、座学、学内実習、レポート指導、試験問題の作成、成績評価などが続きます。上級学年では、臨地実習、卒業研究、就職活動、国家試験対策が重なります。卒業研究では、テーマ設定から実験、データ解析、発表まで学生に伴走します。国家試験が近づけば、学生の理解度や学習状況を確認しながら、受験に向けた支援を行います。
さらに、オープンキャンパスや高校訪問、出前授業などの広報活動もあります。大学教員の場合は、入試問題の作成、試験監督、図書館運営、学生相談、教員研修、研究費獲得に関する委員会など、学校運営にも関わります。
教員は、授業をする人であると同時に、学生の成長を支え、学校という組織を運営する一員でもあるのです。

- 4月は新入生支援から始まる
- 講義と実習を並行して担当
- 卒業研究や国家試験も支援
- 入試や広報にも関わる
- 学校運営も重要な仕事
教員におけるキャリアパス
臨床検査技師が教員になる道は一つではありません。病院で長く働いた後に教育の世界へ進む人もいれば、大学院で研究を続け、学位取得をきっかけに大学へ移る人もいます。母校の教員から声をかけられたことが転機になる場合もあります。
例えば、病院で35年間働き、管理職やスポーツ指導を経験する中で、人を育てることの楽しさに気づき、教員となったケースがあります。また、病院勤務を続けながら、仕事が終わった後に研究室へ通い、長年の研究活動を経て博士号を取得し、大学教員となったケースもあります。
近年、大学教員には修士や博士などの学位が求められる傾向があります。一方、臨床現場で培った経験も大きな強みです。検査室での判断や多職種との関係、新人教育の実際などを、具体例とともに学生へ伝えられるからです。
教員になった後は、教育や研究を深める道、教授を目指す道、学科長などの管理職を担う道があります。養成校によって実務教育や研究など重視する分野が異なるため、自分の強みと学校の方針が合うかを見極めることも大切です。

- 臨床経験から教員になる道
- 研究活動も教員への入口
- 修士・博士の学位が重視される
- 教育・研究・管理職の道がある
- 自分と学校の特色との相性も重要
教員としてのやりがいと魅力
教員の大きなやりがいは、学生の成長を間近で見られることです。授業中、分からなかった学生の表情が変わり、「そういうことだったのか」と理解する瞬間があります。教員は、その反応を引き出すために、説明方法や教材、具体例を工夫します。どのように伝えれば興味を持ってもらえるのかを考える過程も、教員の楽しさです。
学生の成長は、知識や技術だけではありません。入学時には自分の意見を言えなかった学生が、卒業研究では仲間をまとめるようになることがあります。挨拶や感謝、他者への配慮など、人として成長する姿に立ち会えることも大きな喜びです。
高校を卒業してから社会へ出るまでの数年間は、人が大きく変化する時期です。その過程に伴走し、学生が目指す未来へ少しでも近づけるよう支援できることは、教員ならではの魅力です。
さらに、卒業生が臨床現場で活躍したり、学会で発表したりする姿を見ると、教員は長期的な成長を実感できます。教える側も試行錯誤を重ね、学生とともに成長していく仕事といえるでしょう。

- 学生が理解する瞬間に立ち会える
- 人間的な成長も見守ることができる
- 若者の重要な時期に伴走する
- 卒業後の活躍が大きな喜びになる
- 教員自身も学び続ける仕事
近年の学生の特徴と教育的工夫
近年の学生は、真面目で、与えられた課題には丁寧に取り組む一方、自分から質問したり、意見を表明したりすることを苦手とする傾向があります。知識を取り入れるインプットは得意でも、自分の言葉で説明するアウトプットには不安を感じる学生もいます。
また、人と違うことを恐れ、集団からはみ出さないように行動する姿も見られます。ただし、こうした特徴を学生個人の問題と捉えるべきではありません。現在の学生の姿は、その人たちが育ってきた家庭、学校、社会の環境を反映したものでもあります。
教育上の工夫としては、グループワークや発表、アクティブラーニングなどがあります。ただ、教員がすべてを決めるのではなく、グループや役割を学生自身に選ばせることで、小さな意思決定を積み重ねてもらいます。
また、研究、学会、技師会活動、医療機関など、授業外の世界に触れる機会も重要です。自分が面白いと思える分野に出会えば、学生は自ら学び始めます。教員には、過去の学生と比較するのではなく、今の学生と同じ目線に立ち、主体性を引き出す姿勢が求められます。

- 真面目で課題には丁寧に取り組む
- 発言や自己表現を苦手とする傾向がある
- 学生の姿は社会環境を反映している
- 能動的に参加する授業が必要
- 興味を持てる体験を増やすことが重要
臨地実習、臨床と教育のギャップ
養成校では、学生に基礎知識を身につけさせ、国家試験に対応できる力を育てます。一方、臨床現場には、教科書では扱いきれない例外や実践的な判断があります。
例えば、微生物検査における耐性菌の仕組みには多くの例外があります。しかし、基礎を学ぶ段階から例外をすべて教えると、学生が基本事項まで理解できなくなる可能性があります。学校では原則を学び、臨地実習や就職後に例外や応用を学ぶという段階的な教育が必要です。
臨地実習で学ぶべきものは、知識や手技だけではありません。臨床検査技師が検査結果にどう責任を持ち、患者や他職種とどのように関わっているのか、どのような思いで仕事をしているのかを知ることも重要です。
実習指導者に負担を集中させず、検査室全体で学生を育てる体制も求められます。地域によっては人員不足や病院再編により、実習を受け入れられる施設が減っています。養成校、医療機関、技師会が役割を共有し、地域全体で学生を育てる必要があります。

- 学校では基礎知識を教える
- 現場では例外や実践を学ぶ
- 初学者に高度な内容を求めすぎないことが大切
- 仕事への姿勢も重要な学び
- 地域全体で臨地実習を支える必要がある
これから求められる教育内容
これからの臨床検査技師教育では、検査の原理や技術だけでなく、DX、AI、医療政策、病院経営、マネジメント、地域医療、介護、在宅医療などを学ぶ必要があります。
例えば、診療報酬や病院経営を取り上げると、学生から「なぜこの制度になったのか」「検査室は病院経営にどう関係するのか」といった質問が生まれます。地域医療についても、自分の祖父母や暮らしている地域と結びつけて考えることで、身近な問題として理解できます。
電子教科書やタブレットは、情報を整理する際には便利です。一方、暗記や振り返りには紙の方が使いやすいと感じる学生もいます。デジタル化そのものを目的にせず、学び方に応じて使い分けることが重要です。
現在の養成課程は必修科目が多く、学生が自主的に研究や学外活動へ取り組む時間が限られています。基礎知識を保障しながら、自ら問いを見つけ、考え、行動する余白をどう確保するかが課題です。

- DXやAIに関する教育が必要
- 経営や政策も重要な学習分野
- 地域医療を身近な問題として考える
- 教材は目的に応じて使い分ける
- 主体的に学べる時間が必要
今後の養成校のあり方
少子化や医療職志望者の減少により、養成校を取り巻く環境は厳しくなっています。今後は、すべての学校が同じ教育を行うのではなく、それぞれの特色を明確にする必要があります。
例えば、生殖補助医療、データサイエンス、研究、地域医療、在宅医療など、学校が得意とする分野を示すことで、学生は具体的な将来像を描きやすくなります。大学と病院が連携し、午前中は大学で疾患について学び、午後は病院で診断や治療の流れを体験する取り組みも有効です。
また、高校生になってからではなく、小中学生の段階から臨床検査の仕事を伝える活動も必要です。限られた若者の中で、医療や臨床検査に関心を持つ人を増やすことが求められます。
臨床検査技師の進路を、病院の検査室だけに限定してはいけません。企業、研究、行政、教育などで働く人も、臨床検査を基盤に社会へ貢献しています。多様なキャリアを臨床検査の一部として示すことが、職業の魅力と可能性を広げます。

- 少子化への対応が必要
- 養成校ごとの特色化が重要
- 病院や地域との連携を進める
- 小中学生への職業広報も必要
- 多様なキャリアを示すことが求められる
総括
教員は、知識や技術を教えるだけでなく、学生が臨床検査技師として、そして社会人として成長する過程に伴走する仕事です。その仕事は講義にとどまらず、実習、研究、学生支援、国家試験対策、入試、広報、学校運営まで広がっています。
一方で、少子化、実習施設の不足、過密なカリキュラム、DXやAIへの対応など、養成校だけでは解決できない課題も増えています。これからは養成校、医療機関、企業、技師会などが連携し、業界全体で人材を育てる必要があります。
また、臨床検査技師の活躍の場を検査室だけに限定せず、企業、研究、行政、教育など、多様なキャリアを示すことも重要です。学生が初めて臨床検査という学問に触れた時に、「面白い」「もっと知りたい」と感じられる教育をつくることが、臨床検査の未来につながります。

- 教員は学生の成長に伴走する
- 人間的な成長も支える仕事
- 教育を取り巻く課題は多様化している
- 業界全体で人材を育てる必要がある
- 教育は臨床検査の未来づくり
次回予告
次回は、「病棟」をテーマにお届けします。
病棟で働く臨床検査技師は、検査室の中だけでは見えにくい患者の状態や、多職種による診療の流れに直接触れながら、検査データを生かした臨床支援を行っています。採血や各種検査への対応に加え、検査結果の説明、異常値への対応、カンファレンスへの参加など、その役割は広がりつつあります。
具体的な業務内容、求められる知識やコミュニケーション力、多職種との連携、キャリア形成、そして病棟における臨床検査技師の未来について読み解いていきます。


