第3回テーマ 経営資源の全体像 ― ヒト・モノ・カネ・情報
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1.病院は何によって動いているのか
皆さんは普段、自分の職場をどのような視点で見ているでしょうか。
臨床検査技師であれば、検査業務や精度管理、機器管理などが日常の中心だと思います。
しかし、病院全体を見渡してみると、多くの職種や設備、システムが関わりながら医療が提供されています。
経営学では、組織が活動するために必要なこうした要素を「経営資源」と呼びます。
一般的には「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つに分類されます。
例えば、検査室を考えてみましょう。
検査を実施するためには技師が必要です。分析装置や試薬も必要です。それらを購入し維持するための予算も必要になります。そして、患者情報や検査データがなければ検査は成立しません。
つまり検査室は、「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源の集合体なのです。
病院全体も同じです。
医師や看護師、技師、事務職員が働き、建物や医療機器が整備され、診療報酬による収入をもとに運営され、電子カルテや検査システムなどの情報が活用されています。
私たちが日々当たり前のように行っている医療は、これらの経営資源によって支えられているのです。
2.病院を支える4つの経営資源
それでは、それぞれの経営資源について見ていきましょう。
まず重要なのが「ヒト資源」です。
医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、リハビリ職、医療ソーシャルワーカー、事務職員など、病院で働く人材がここに含まれます。
医療機器がどれほど進歩しても、それを使いこなし、患者さんに価値を提供するのは人です。そのため、多くの病院では支出の半分以上を人件費が占めています。病院経営において、人材の確保や育成は極めて重要なテーマです。
次に「モノ資源」です。
病院の建物や病床、検査機器、CTやMRI、手術室設備、試薬や医療材料などが含まれます。
医療機器の高性能化が進む一方で、その導入や維持には多額の費用が必要です。また、機器は購入して終わりではなく、保守点検や更新も必要になります。病院がどのような設備投資を行っているかを見ると、その病院がどの分野に力を入れているのかが見えてきます。
三つ目が「カネ資源」です。
収入の中心となるのは診療報酬ですが、その収入をもとに人件費や医薬品費、設備費などを支払っています。これはカネ資源として整理できます。
病院は医療を提供する公益性の高い組織ですが、経営が成り立たなければ医療を継続することはできません。新しい機器を導入したり、人員を増やしたりするためにも資金は必要です。病院経営というと利益を追求するイメージを持つ方もいますが、本来は地域に必要な医療を継続するための基盤づくりとも言えます。
そして四つ目が「情報資源」です。
患者情報、診療情報、検査データ、画像データ、経営指標など、病院には膨大な情報が存在しています。例えば臨床検査技師は、日々検査データを扱っています。これらは情報資源といえます。
近年、特に重要性が高まっているのがこの情報です。そのデータは診断や治療だけでなく、病院全体の医療の質向上や経営判断にも活用されています。また、電子カルテや医療DXの進展によって、情報をどのように活用するかが病院の競争力や医療の質を左右する時代になっています。医療は「情報産業」であると言われることがありますが、その理由もここにあります。
3.経営資源には限りがある
ここまで見てきたように、病院はヒト・モノ・カネ・情報という経営資源によって支えられています。
しかし、これらの資源には限りがあります。
もし無限の予算があれば、最新の機器をすべて導入できるかもしれません。人材も十分に確保できるでしょう。しかし現実はそうではありません。
人材不足は全国的な課題となっています。医療機器は高額化し、建物の維持管理費も増加しています。診療報酬は限られており、すべての要望を実現することはできません。そのため病院は常に選択を迫られています。
どの部門を強化するのか。
どの機器を優先して更新するのか。
どのような人材を採用するのか。
どこに予算を配分するのか。
こうした優先順位を決めることこそが、経営の重要な役割です。
検査室でも同じです。
新しい分析装置の導入、人員配置、検査の内製化や外注化など、多くの場面で経営判断が関わっています。
現場で働いていると、経営は管理職や事務部門の仕事だと感じるかもしれません。
しかし私たちも、日々経営資源を活用しながら医療を提供している当事者です。
自施設がどこに人を配置し、どのような設備投資を行い、何を重視しているのかを見てみると、その病院が目指している方向性が見えてくるかもしれません。
次回は、病院の収入の柱である「診療報酬」について解説します。
病院はどのように収入を得ているのか、そして検査室の業務がどのように病院経営を支えているのかを一緒に考えていきましょう。
参考:イラストで振り返る


