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#02 不妊治療と仕事の両立のリアル ―データから見える現状と、医療職が直面する課題―

第一話では、私自身の不妊治療退職についてお伝えしました。第二話では、不妊治療と仕事の両立を取り巻く現状から、医療職が直面する課題についてお話しします。

読了目安時間:11分程度(1分300文字)

不妊治療と仕事の両立は社会的課題

不妊治療と仕事の両立は、「妊娠」というデリケートな話題に触れなければならないことから、どちらかというと個人の問題として捉えられがちでした。

実際に子どもを望むかどうかは個人が決めることであり、社会が不妊治療と仕事の両立を推進することは、子どもを産むことを暗に強制することになるのではないか。そのような意見をいただいたことも一度や二度ではありませんでした。

ただ、こうした言葉の裏には、「ギリギリの人数で回しているのに、不妊治療で頻繁に休まれても困る」という現場の思いが見え隠れすることも少なくありませんでした。

そのような中、2018年に厚生労働省は「不妊治療連絡カード」という様式を作成しました。これは、国が不妊治療と仕事の両立支援に本格的に取り組み始めたきっかけの一つです。

確かに妊娠は個人の問題です。しかし、働いている職場環境や自身のキャリアプラン、周囲からの期待やプレッシャーによって、思うようにライフプランを立てられないのも事実です。

実際に「不妊治療を検討しているが、仕事との両立を考えると踏み出せない」と、1年以上悩んでいるというご相談をいただくこともあります。

不妊治療と仕事の両立は、決して個人だけの問題ではありません。会社や同僚、上司の理解が得られず、年齢だけが過ぎて焦りばかりが募っている人も少なくないのです。

不妊治療と仕事の両立に関する現状

2023年に実施された厚生労働省の調査結果では、26.1%の女性が不妊治療と仕事の両立に悩み、仕事を辞めた、治療を諦めた、雇用形態を変更したと回答しています。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39168.html)

両立が難しい理由としては、
・通院回数が多い
・精神的負担が大きい
・仕事の日程調整が難しい
・仕事がストレスとなり不妊治療に影響が出る

などが上位に挙げられています。それ以外にも、職場の理解が得られないことや長時間労働などが理由として挙げられています。

また、不妊治療について職場に伝えていない人は47%にのぼります。さらに、不妊治療をしていることを伝えた結果、上司や同僚などから嫌がらせや心ない言動を受けたと回答した人も20%を超えています。

上司や同僚からの心ない発言は、私自身も経験がありますし、ご相談の中で伺うこともあります。
「いつになったら妊娠するのか」
「いつまで治療を続けるのか」
「そこまでして子どもが欲しいのか」

など、ここには書くことのできないような言葉を浴びせられた方もいらっしゃいます。

不妊治療と仕事の両立が難しい理由

不妊治療と仕事の両立に関する現状を厚生労働省の調査結果をもとにお伝えしましたが、ここでは、なぜ不妊治療と仕事の両立が難しいのかを解説します。

① 通院のタイミングが読めない
不妊治療は月経周期にあわせて治療が進められます。生理が来れば、一般的には3日後から5日以内にその周期最初の受診を行います。
その後は治療のステップや医師の治療方針によって異なりますが、体外受精であれば一般的に排卵誘発剤を用いて卵巣刺激を行います。
医師の見立てどおりに卵胞が成長する人もいれば、思うように成長しない場合もあります。そのため、その時々の状況を見ながら次回受診日の指示が出されます。
中には「もう一度明日受診してください」と言われることも決して珍しくありません。
「なんとかやり繰りをして今日受診したのに、また明日も受診しなければならない」
そんな気持ちで病院を後にすることも少なくありません。

② 平日日中の通院が多い
都市部であれば夜間診療を行っている不妊クリニックも増えてきましたが、まだまだ仕事終わりに通院できるクリニックは多くありません。
また地方の場合は、そもそも体外受精が可能なクリニックまでの通院時間が片道1時間以上かかることも珍しくありません。
そのため、クリニックへ通院するために半日以上の休暇が必要になることもあります。

③ 不妊治療の流れや仕組みが理解されていない
不妊治療は、他の疾患のように予定を決めて通院できるものではありません。また、治療が始まると何度も通院する必要があります。
この不妊治療特有の流れがなかなか理解されないため、「もう少し計画的に通院できないのか」と上司から注意を受けたり、同僚に陰口を言われたりしたという話を伺うこともあります。

④ 体調(ホルモン治療・採卵後など)の影響
不妊治療で使用するホルモン剤の影響で体調を崩してしまう人もいます。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といって、排卵誘発剤の影響で卵巣が腫れ、時には入院が必要になる場合もあります。近年はさまざまな予防法が確立されており、以前に比べると発症頻度は減少しています。

⑤ 精神的負担
不妊治療による精神的負担は、周囲が思っている以上に大きなものです。また、周囲に相談しにくいことも、その精神的負担をさらに大きくしています。
国立成育医療研究センターの調査では、高度不妊治療を受ける女性の約54%が、治療開始初期から軽度以上の抑うつ症状を抱えていることが報告されています。
(https://www.ncchd.go.jp/press/2021/210415.html)

精神的な負担から、休職や退職を選択せざるを得ない女性も少なくありません。
不妊治療と仕事の両立は、本人の努力や気合だけで何とかできるものではないのです。

医療職の不妊治療と仕事の両立の難しさ

不妊治療と仕事の両立に関するご相談では、実は医療職からの相談も少なくありません。

近年はフレックスタイム制度や在宅勤務制度などを活用し、不妊治療と仕事を両立しやすい環境を整えている企業も増えてきました。しかし、医療職をはじめとした現場で働く職種では、こうした制度を活用することが容易ではありません。

ましてや、一度決まったシフトを通院の都合でたびたび変更してもらうことに、大きな心理的負担を感じる方も多いでしょう。
もちろん、人員に余裕のある職場であれば何らかの対応ができるかもしれません。しかし、少人数の職場では現実的に難しいケースも少なくありません。

実際に私が過去に実施したアンケートでも、医療職など出社が必須でシフト勤務がある働き方の場合、在宅勤務やフレックス勤務が可能な職種と比較して、「不妊治療と仕事を両立できている」と回答した割合が約2割低い結果となりました。

医療職は患者さんを支える立場でありながら、自身の治療については十分な支援を受けられないことも少なくありません。だからこそ、不妊治療と仕事の両立という課題は、医療職にとってより深刻な問題となりやすいのです。

まとめ

不妊治療と仕事の両立は、決して本人の努力だけで解決できる問題ではありません。
通院のタイミングが読めないことや身体的・精神的負担に加え、職場の理解不足や制度の未整備など、個人ではどうにもできない要因が数多く存在しています。

特に医療職のように現場対応やシフト勤務が求められる職種では、通院時間の確保そのものが大きな課題となります。その結果、治療の継続やキャリア形成に悩み、退職や治療断念を選択せざるを得ない方も少なくありません。

不妊治療と仕事の両立を実現するためには、本人の努力だけでなく、職場の理解や柔軟な制度整備、そして社会全体で支える環境づくりが欠かせません。

不妊治療をしている人が、治療か仕事かの二者択一を迫られることなく、自分らしいライフプランやキャリアを選択できる社会を目指していくことが求められています。

次回は、ひとりで抱え込まないために活用できる制度や周囲への伝え方についてお伝えします。

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この記事を書いた人

臨床検査技師・認定不妊カウンセラー。就職氷河期世代として3回の転職を経て、ようやく自分に合う仕事に出会うも、不妊治療との両立が難しく退職し、キャリアの中断を経験。不妊治療と仕事の両立という社会課題に向き合うため個人で起業し、不妊カウンセラーとして活動する中でりんわくメンバーと出会う。同じ悩みを抱える人の支えになりたいという思いを軸に、現在は会社員として働きながら、個人事業やりんわくでの活動にも取り組んでいる。

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