第2回テーマ
「ミッション・ビジョン・戦略 ― 何を目指す病院か?」
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1.病院にも「目指す方向」がある
皆さんは、自分の勤務する病院の理念や基本方針をしっかり読んだことがあるでしょうか。
病院のホームページや院内掲示を見ると、「地域に信頼される医療を提供する」「患者中心の医療を実践する」といった文章が書かれていることがあります。しかし、忙しい日常業務の中では、それを意識する機会はあまり多くないかもしれません。
一方で、病院経営という視点で見ると、これらは単なる飾り文句ではありません。病院がどのような役割を果たそうとしているのか、どこを目指しているのかを示す重要な“方向性”です。
企業であれば、「どの市場で、どのような価値を提供するのか」を考えながら経営を行います。病院も同様に、「地域の中でどのような医療を担うのか」「どの患者層を支えるのか」「どの機能を強化するのか」を考えながら運営されています。
つまり、病院は単に医療を提供しているだけではなく、“目的”と“方向性”を持って動いている組織なのです。
その方向性を理解する上で重要となるのが、「ミッション」「ビジョン」「戦略」という考え方です。
2.ミッション・ビジョン・戦略とは何か
まず、それぞれの言葉を簡単に整理してみましょう。
**ミッション(Mission)**は、「病院が果たす使命」のことです。
なぜこの病院が存在しているのか、社会に対してどのような価値を提供するのかを示します。
例えば、
- 地域住民の健康を支える
- 高度急性期医療を提供する
- 救急医療を24時間体制で担う
- などがミッションにあたります。
次に、**ビジョン(Vision)**です。
これは「将来どのような病院を目指すのか」という将来像を意味します。
例えば、
- 地域で最も信頼される病院になる
- がん医療の中心的役割を担う
- 多職種連携のモデル病院を目指す
といった内容です。
そして最後が、**戦略(Strategy)**です。
これは、ミッションやビジョンを実現するために、「具体的に何を行うのか」を示します。
例えば、
- 救急受け入れ体制を強化する
- 手術件数を増やす
- 在宅医療との連携を強化する
- DX化を進める
- 専門人材を育成する
などが戦略になります。
つまり、
ミッション=「なぜ存在するのか」
ビジョン=「どこを目指すのか」
戦略=「どう実現するのか」
という関係になります。
3.検査室も病院戦略の一部である
ここで重要なのは、病院の戦略は経営層だけの話ではない、ということです。
病院が「救急医療を強化する」という戦略を掲げれば、検査室には迅速検査体制や24時間対応の強化が求められるかもしれません。
「がん診療を強化する」という方針であれば、病理検査や遺伝子関連検査の体制整備が重要になるでしょう。
また、「地域包括ケア」を重視する病院であれば、在宅医療や慢性疾患管理を支える検査体制が必要になります。
つまり、検査室の業務や設備投資、人材育成も、病院全体の方向性と密接に関係しているのです。
しかし実際には、「なぜこの機器更新が必要なのか」「なぜこの分野の強化が求められているのか」が十分共有されないまま進むことも少なくありません。その結果、「現場は忙しいのに、なぜさらに業務が増えるのか」と感じる場面もあります。
だからこそ、病院全体のミッションやビジョンを知ることが重要になります。背景を理解することで、日々の業務が単なる作業ではなく、「病院の方向性を支える役割」であることが見えてきます。
また、自分自身のキャリアを考える際にも、「この病院はどこへ向かおうとしているのか」を知ることは大きな意味を持ちます。高度専門医療を強化する病院なのか、地域密着型を目指す病院なのかによって、求められる人材像も変わるからです。
病院経営を学ぶということは、単に数字や制度を知ることではありません。「この病院は何を目指しているのか」を理解し、その中で自分がどのような価値を発揮できるのかを考えることでもあります。
ぜひ一度、自分の病院の理念や中期計画を読み返してみてください。そこには、日々の業務を違った視点で見るヒントが隠れているかもしれません。
次回は、「経営資源の全体像 ― ヒト・モノ・カネ・情報」をテーマに、病院がどのような資源によって支えられているのかを整理していきます。
参考:イラストで振り返る


