「働く女性のキャリア応援」と題して、不妊治療と仕事の両立や卵子凍結、キャリアとライフプランの描き方について、6回に分けてお伝えしていきます。
第一話は、そもそもなぜ私が「不妊カウンセラー」として、このような活動をしているのか、その原点になったお話をさせていただければと思います。
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2001年春、私は臨床検査技師の国家資格に合格し(合格発表そのものは4月末だったと思います)、晴れて社会人1年生となりました。ただ2001年といえば、就職氷河期の中でも底と言われた時代。それは臨床検査技師業界も同様でした。そもそもの求人の数も少なく、さらにそこで正職員での就職となれば狭き門でした。もちろん希望を叶えるなんて贅沢なことは言ってはいられません。そんな中、ようやく手にしたのが検査センターでの仕事でした。ただ家庭の事情もあり、検査センターは1年と少しで退職することになりました。
その時に、改めて「自分は何がしたいのか」を考えたときに出てきたキーワードが「微生物」でした。その後は医療機関だけにこだわるのではなく、選択肢を広げた結果、企業で微生物試験に携わる業務に就くことができました。企業での微生物試験は臨床とは違うものの、学生時代の知識を活かせる場も多く、気が付けばこの仕事にのめり込んでいました。きっと定年までこの世界で仕事をするのだろう……と、漠然とした未来を描いていました。
ただそんな私の前に「不妊治療」という大きな壁が立ちはだかったのです。
職場で出会った夫と結婚した時の私は、29歳目前の28歳でした。正直妊娠に関してはそこまでの焦りはなく、30歳ぐらいで妊娠できればいいかなと漠然と考えていました。
ただ結婚から1年半ほど経ってもまったく妊娠の兆候はなく、ぼちぼち外野からの声もうるさくなり、自分自身にも少しずつ焦りが出てきました。
基礎体温を測ったり、排卵検査薬を使って排卵日の予測をしたりした結果、結婚から2年弱で最初の妊娠をしました。しかし残念ながら、最初の妊娠は初期の自然流産という結果に終わってしまいました。初期の自然流産は決して珍しいものではありません。ただ2年弱待ち続けた待望の妊娠判定陽性だったこともあり、ショックは大きなものでした。そしてようやく重い腰を上げて不妊クリニックの扉を叩いたのです。
「不妊治療さえすれば原因がわかってすぐに妊娠できるはず」――当時の私はそんな風に考えていました。しかし自分が思い描いたように事は運びませんでした。そして「不妊治療と仕事の両立」という問題が大きくのしかかるようになっていきました。今でも不妊治療と仕事の両立に関しては十分な支援が行われているとは言い難い面がありますが、15年前は、そもそも不妊治療自体の認知も低く、不妊治療と仕事の両立支援を企業が考える段階にも達していませんでした。
定時に仕事を終えて、なんとかギリギリ病院の受付に間に合わせる、そんな毎日でした。とはいえ、当時は「残業して当たり前」の働き方がまだまだ一般的だった時代で、定時ダッシュでの帰宅を繰り返していると陰口を叩かれることもありました。それでもこの時期は閑散期だったこともあり、周りの言葉に耳をふさぎながら通院をやり繰りすることができました。ただ目の前には年単位の繁忙期が迫ってきていました。それも1年程度ではなく、落ち着くのは数年先の見通しでした。
ここで「キャリア」か「不妊治療」かの2択を迫られることになります。就職氷河期世代から必死になって掴み取ったキャリアを捨てるのか、それとも子どもを持つことを一旦は諦めるのか……。
確かに繁忙期を過ぎてから不妊治療を再開するという選択肢もありました。周りからも、まずは仕事に専念すればと言われたこともあります。ただ当時の私は32歳。ここで仕事を優先すれば、不妊治療を再開できるのは35歳、もしくは36歳、あるいはもっと先になるかもしれない。そもそも先延ばしにして、不妊治療と仕事を両立できる環境に本当になるのだろうか――そんな思いもありました。
男女ともに生殖年齢にはリミットがあります。キャリアを優先した場合、「10年後、私は本当に後悔しないのか?」その問いに私は答えを出すことができませんでした。「仕事に生きる」という選択はどうしてもできず、2011年7月に私は、ようやく手にしたキャリアを手放すことにしたのです。そして翌年の秋、私は第一子を出産しました。
退職後は、不妊治療、妊娠、出産と慌ただしく過ぎ去り、不妊治療退職についてあれこれと考える余裕はほとんどありませんでした。何より妊娠期もさまざまなトラブルが発生し、ただただ無事に生まれてきてくれることしか考えられませんでした。
改めて不妊治療退職について考えるようになったのは、子どもが1歳の誕生日を迎える頃でした。ちょうど周りで育休復帰が話題になるころ、「私には戻れる場所も、築き上げたキャリアも何もないんだ」ということを改めて痛感したのです。
私と同じような思いをする人をひとりでも減らしたい。社会や組織に、不妊治療と仕事の両立に対する理解と支援の促進を進めたい――それが私の活動の原点です。
第2回は、不妊治療と仕事の両立のリアルについてお伝えします。


